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仲の良い家族でも

相続

相続での矛盾、そして売却の失敗談


〜家族が壊れた「実家」の物語〜


1. 「お母さんが亡くなったから、実家をどうするか話し合いたい」

母が亡くなったのは、ある年の梅雨の終わりだった。

闘病生活の末、静かに息を引き取った母の遺影を囲みながら、
私は長男としての責任感と、不安の入り混じった気持ちで、
親族の集まる和室に座っていた。

集まったのは、私と妹、それに東京で働く弟。

一通りの法要が終わった後、妹が切り出した。

「お兄ちゃん、この家……どうするの?」

その言葉に、空気が一変した。

「売るしかないだろう。誰も住まないし、管理も大変だ」

弟の言葉に、私はうなずいた。

築38年の木造住宅。空き家になれば、すぐに傷む。
税金もかかるし、防犯面も心配だ。

だが、妹の返事は違った。

「私は手放したくない。ここはお母さんとの思い出の場所なの」

ここから、私たちの**「相続の矛盾」**が始まった。



2. 思い出と現実、そして感情の食い違い

妹は結婚して近くに住んでいた。
彼女にとって、この家は子ども時代の思い出の詰まった宝箱だったのだろう。

「せめて数年は残しておいてほしい。お母さんの仏壇だってあるし……」

妹の目には涙が浮かんでいた。
だが私と弟にとっては、すでに**「空き家=資産ではなく負債」**だった。

誰も住まない家のために固定資産税を払い、草むしりに通い、冬は凍結対策……
すでに疲弊していた。

それでも、無理に話を進めることはできなかった。
不動産の相続には、「共有者の同意」が必要だからだ。



3. 売却を巡る決断と失敗

半年後、私たちはようやく売却の方向で合意した。

妹の「せめて仏壇は移したい」という希望を尊重し、整理を始めた。

そして私が主導して、地元の不動産会社に査定を依頼。
A社とB社の見積もりはどちらも「土地値のみで約1200万円」。

築年数が古く、建物は評価ゼロ。
買主も「更地にして使う」という条件がほとんどだった。

だが、ここでもまた新たな矛盾が浮かび上がった。

「えっ?更地にするなら、解体費って売主負担なの?」

妹と弟の顔色が変わった。
解体には約150万円。それを相続人3人で割れば、一人50万円。

「そんなお金ないよ……」

急に態度が硬化した弟が、売却自体に反対し始めた。

私としては、これ以上管理費を払い続けるのは無理だった。
だが、全員が納得しないと売却手続きは進まない



4. まさかの「名義変更」トラブル

私が次に動いたのは、**相続登記(名義変更)**だった。

登記が完了しない限り、不動産は売却できない。
だがここでも問題が発覚する。

妹と弟は「自分の名義が載ると税金がかかるんじゃないか?」と不安がり、
なかなか印鑑証明と書類を提出してくれなかった。

さらに、弟が「俺は放棄するから」と言い出した。
だが、「相続放棄」は家庭裁判所に申述してから3ヶ月以内に限られる。

すでに半年が経過しており、それは使えなかった。

「だったらこのまま放っておけばいいじゃないか」

弟は投げやりな態度を見せたが、
登記ができなければ売却も進まない。



5. 家の価値が下がっていく現実

迷っている間にも、家は老朽化していった。

台風で屋根瓦が飛び、近隣からクレーム。
シロアリの被害も見つかり、修繕に15万円かかった。

売却価格は、いつの間にか1000万円を切っていた。

売却チャンスを逃した結果、
“持ち家”だったものが “負債”へと変わっていく感覚が、私の中に広がっていった。

不動産は「動かない資産」だと痛感した。
動かないどころか、**感情と法律に縛られた“重たい荷物”**だった。



6. やっと売却できたのは「母の三回忌」だった

ようやく弟と妹の同意を得られたのは、母の三回忌の法要の席だった。

「兄貴に任せるよ」

弟のその言葉に、私はようやく肩の荷が下りた。

ただしその頃には、買主候補だった不動産業者はすでに撤退していた。
結局、別の業者を通じて、土地だけで800万円で売却。

解体費用と諸費用を引いた後、
3人で分けた金額は、一人200万円ほど。

最初の査定額から比べると、400万円近いマイナスだった。



7. 今、思うこと

私はこの一連の経験で学んだ。

相続は、単なる「遺産の受け取り」ではない。
むしろ、それぞれの価値観、感情、経済状況が衝突する「家族の試練」だった。

もし、母が「実家をどうするか」を生前に話し合ってくれていたら――。
もし、私たち兄弟がもっと冷静に話し合えていたら――。

売却で得られる金額も、家族関係も、もっと良い形にできていたのかもしれない。



【まとめ】相続と不動産売却で失敗しないために

1. 生前に話し合いを

→「親が元気なうちに、家の処分や方針を話しておく」ことが何より大切です。

✅ 2. 相続登記は早めに

→ 名義変更が遅れると、売却もできず、管理も負担に。令和6年からは登記の義務化が始まります。

✅ 3. 感情と金銭の線引きを

→ 思い出や愛着は大切ですが、現実的な維持費・税金の負担も冷静に考えましょう


これは、実話をもとにしたフィクションですが、同様のトラブルは全国で数多く起こっています。
あなたがもし、相続や不動産の問題に直面しているなら、今のうちから準備を始めてください。

家は、人生そのものです。そして、売るということは、その人生の整理です。
後悔のない判断ができるよう、心から願っています。


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この記事の執筆者

このブログの担当者 高橋

♢不動産キャリア:22年

♢保有資格:宅地建物取引士

♢お客様にとって最適な物件を提案し、安心して取引ができるよう、常に信頼と誠実を大切にしたサービスを提供しています。

岐阜県全域・愛知県尾張地区で不動産情報の提供や売却・相続のご相談も承っています。ご希望の方には、おすすめの物件をご紹介いたします。